悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
「どうか、俺を『出来る』ようにして欲しい……!」

 ――という、とんでもないものだった。


「……え?」

 不敬かどうかなんてことをまるっと忘れ、動揺するまま目の前に立つ公爵様の勃つべき部分と顔を見比べる。

“ま、まさか勃たないってこと?”

 勃たない夫に絶望して翌日みんな逃げ出した、というパターンが正解だったのかしら、なんて混乱を極める私に気付いた公爵様は、思い切りごほんと咳払いをした。

「一応俺の名誉のために言っておくが、不能ではない」
「あ、はは、可能ってことですね、失礼しました」

“やだ私ったら!”

 思わずそんな言葉が飛び出て慌てて口を両手で覆う。
 一瞬だけムッとした顔をした公爵様だが、特に叱られることもなく彼は表情を元に戻した。

“本当に悪徳公爵なの?”

 噂のように冷酷で非道だったなら、ただの娼婦なんて不敬だとここで斬り捨ててもおかしくない。
 だがそうする様子もなく、まるで射貫くように私を真っ直ぐ見つめる彼にドキリとする。

「……俺は、今まで出来たことがないんだ」
「は、はい」

“出来たことがないって、お子のことかしら”
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