悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~

18.無防備な寝顔をひとりじめして

 娼館・ノースィルでは、娼婦一人一人に部屋が与えられる。
 第二の自室ともいえるその狭い部屋でお客様を迎えることになり、その室内装飾は自由にしていい。
 とは言っても、デビューして間もない私の部屋はまだあまり物がなく、必要最低限のものがあるだけだ。

“まさか、二度目はこの天井を見上げることになるなんて”

 はじめての日に見上げたのは、豪華な天蓋だった。
 あの日と同じように彼に組み敷かれ、腰を揺すられながら頭の隅にそんなことが過る。

 二度目の行為は私から痛みを無くし、恐ろしいほどの快感を与えた。
 波に攫われるように快感に溺れ、言葉になっていない甲高い声を響かせながら必死でしがみつく彼の背中は相変わらずたくましくて、その背中に残った爪跡が夢ではなかったのだと証明するようだった。
 そしてその爪跡の対として私の首筋に鬱血痕が残っている。

 もちろんお客様に傷をつけるだなんて娼婦としてあり得なく、青ざめて謝罪する私に「これでお揃いだな」なんて笑顔を向けたのは他でもないルミール様だった。

“あんなセリフが言えるようになるだなんて”

 これがもう童貞じゃない余裕というやつなのか。
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