悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 貰った花束を抱えながら彼の元へと近付くと、私の手を取ったルミール様に背後から抱き締められる。

「お、お花が潰れちゃいます」
「ならばいくらでもまた摘んでくるよ」

 楽しそうに声色を弾ませる彼の声を聞きながら、触れ合った背中から感じる彼の熱が心地いいのに落ち着かない。
 あんなに拗らせていた不器用な彼が、いつの間にこんなスマートなことが出来るようになったのか。

“これも練習、なのよね”

 私がはじめての練習相手?
 それとも例のお見合い相手とここまでは実践済みなのか。

 その疑問の答えがわかることはないけれど、確実なのは、これが本番ではないということだった。

「さっ! 今日もするんですよね!?」
「あぁ、サシャに触れたいと思う」

 素直に頷く彼のその率直な言葉にドキリとした私は、より赤くなっているだろう顔を見られないように、少しだけ時間をかけて花束の花を花瓶へと挿したのだった。

 ◇◇◇

“もう五日連続で来てるのよね”

 公爵家にいた時は毎日のお渡りなんてなかった。
 それは単純に彼の仕事が忙しいからである。
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