悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 違う。これははじめての行為にきっと子供のような独占欲が芽生えているだけで決して男女の感情ではないのだと、私は必死に自分に言い聞かせた。

「いっそ専属契約を結べないだろうか?」
「そ、それはちょっと」

 反射的に首を振ると、明らかにしょんぼりとされて私の方こそ胸がきゅうっと締め付けられる。

 ――専属契約。
 不可能では、ない。だがそれは娼婦を買い上げるという意味のものであり、つまりは身請け。愛人契約だ。
 それにきっと彼は専属契約の意味を知らないだろう。そうでなければ、次の花嫁を探している彼がこんなことを言いだすはずがない。

“悪徳だと呼ばれ散々悪い噂があるのに、更に元娼婦の愛人まで囲っているって見つかるはずの次の花嫁まで見つからなくなっちゃうもの”

 だから、私がちゃんと断らないと。
 そう判断し、この話をもうこれ以上掘り下げるのをやめた私はベッドに座った。

「とりあえず今日は寝ましょう!」
「だが、それではサシャが」
「大丈夫です、私がルミール様を膝枕します!」

 ポンポンと自分の膝を叩きながらそう告げると、その光景をきょとんとして見つめられる。
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