悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~

19.告げないけれど、さようなら

「あ、これ可愛いかも!」

 女将から改めて釘を刺された私は、気分転換がてら仕事の始まる夜まで買い物でもしようかと市井まで来ていた。
 
“今日の私はお財布が温かいからね”

 もちろんその理由は仕事をこなした私にちゃんとお給金が入ったからである。
 出所を考えれば全て公爵家からのお金ではあるが。

 
 ぶらぶらと歩きながら露店の商品を眺めていると、ふと可愛いレースのショールが目に留まる。
 そのショールはレースで出来ているのに裏側は別の布が貼ってあるのか透け感はなく、だが重なって見えている淡い緑の布が美しかった。

「これは何ですか?」 
「あぁ、これはショールなんだけど、なんと裏側に合わせてある布は水を弾くようになっていてね」
「水を!?」
「そうなんだよ。だからテーブルクロスにも使えるんだ」
「テーブルクロスに!? 雨が降ってきたら雨避けにするんじゃなくて!?」
「ふむ、その使い方でもいいね!」

“て、適当ね”

 だがそんな雑なやりとりこそ市井での買い物の楽しいところでもある。
 それに本来の目的以外の使い方がある商品も多い。
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