悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 このショールもそうだし、以前見た置物だってそうだ。

 何通りも使い方があると、わざわざ別のものをふたつ買わないといけないところがひとつで済むのでお得感があるのだ。
 
“ルミール様はそういった『お得感』がわからなさそうだったけれど”

 終始怪訝な顔をして首を傾げる彼が可愛かったことを思い出す。そして同時にツキリと胸が痛んだ。

「買うわ!」

 そんな胸の痛みを誤魔化すように宣言すると、店主がパチンお手を叩く。

「いいねぇ! まいど!」

 景気よくそう言った店主にお金を支払い、早速ショールを羽織った私は更に露店街を真っ直ぐ歩く。
 ガラス玉で出来たイミテーションのカフスボタンに藁で編んだ帽子。
 リボンで出来たバレッタは、端切れで出来ているので私たち庶民でも気軽に買えるお手頃価格だ。

 それでも、これは見た、あれはあの時なかった――なんて頭の片隅にルミール様が何度もちらつき集中出来ない。

「気分転換に来たのにな……」

 このまま真っ直ぐ進むとルミール様と一緒に入った酒屋がある。

“自然と足が向かっちゃうなんて”
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