悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~

20.だからそれは聞いてません!

「おはようございます、女将……」
「ひえっ! あ、あんた化け物みたいな顔になってるよ!」

 今日も今日とて下っ端の私は、昨晩もお仕事を頑張っていただろうお姉様たちの為に料理の下ごしらえを始めようと厨房へ向かっていると、どうやら私の様子を見に来てくれた女将と遭遇する。
 
 ――酷い言われ様ではあるが、心配してくれているのだろう。多分。

「全然大丈夫です、今日の私はやる気に満ち溢れています」
「あ、あぁ、それはいいんだが」
「なのでお客様を沢山お通ししてください!」
「その顔で!?」

 唖然とした表情になった女将に思わずムッとしてしまう。
 流石にその言い種はないと思うのだが、と近くの窓へと顔を向けると、そこには両目が赤く腫れ上がり顔が浮腫んでパンパンになった恐ろしい何かが映っていた。

「化け物!」
「あんただよ……」

 やれやれと軽く首を振った女将から濡らした布を手渡してくれる。
 ひんやりとしたその布を腫れた目元に当てると少しスッキリした。

「ほら、こっちは温めた布だよ。交互に使いな」
「ありがとうございます」
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