悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 しっかりはっきり主語を使わなかった私が悪いのか!?

 あまりの出来事に頭を抱えたくなったが、今頭を抱えたら彼が扉を開けて入ってきてしまうだろう。

“それはダメ!”

 彼だって昨日、あの格好いい令嬢と素敵な時間を過ごしたのだ。
 私との関係を終わらせる絶好のタイミングというやつだろう。

 このままズルズルしていても互いに良くはないし、あの令嬢だって知ったらガッカリしてしまうかもしれない。
 六度も結婚に失敗させる訳にはいかないし、それが私のせいだとなれば尚更だ。

 それに私だって彼を忘れるいいチャンスなのだから!

「私、絶対絶対もう嫌なんですーッ!」

 私のその悲痛な叫びが効いたのか、扉を押さえていた力がふっと消えたことに気が付いた。
 
“わかってくれたということ?”

 まさかこんな締まらない終わりになるとは思わなかったが、だがこれもある意味私たちらしいというものだろう。
 もう開けようとする力がかからなくなった扉から私も手を離す。
 
 あぁ。これで今度こそ本当の本当の本当にさよならだ。

「ルミール様……」
「あぁ、なんだ?」
「いやぁぁあ!?」
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