悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~

21.その感情に名前をつけるなら

“と、扉は無くなったけど、部屋にはまだ踏み込まれてないから拒否権はあるのよね?”

 例え足を踏み込まれ拒否権を失ったとしても、そもそも部屋の中が丸見えになっている現状でそういった行為に及ぶとも思えないが、相手は悪徳であり即尺の公爵だ。
 油断しないよう注意しつつ、こうなってしまっては穏便に話し合いで帰ってもらうしかない。

“穏便の概念がもうわかんないけど!”

 ここは会話だ、と気合をいれた私は、警戒しつつ口を開く。まずはジャブだ。

「も、もう私の元へは来られないかと思いました」

 練習はもう終わりですよね、という意味を込めてそう言ったのだが、若干回りくどかったのだろう。
 ルミール様は不思議そうに首を傾げるだけだった。

「本番が始まるなら練習なんていりませんし!」

 暗に『本命の令嬢』を匂わして次の攻撃を繰り出すが、やはり彼は不思議そうな顔をするだけ。

“そうよ、全てを略してゴールに飛んだ結果口付けすら知らなかったんだから最初から説明しなきゃわからないんだわ”

 私がそんな結論に辿り着き、改めて口を開こうとした時だった。

「練習は、この先もずっといるだろう」
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