悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
「サシャ、ちょっと落ち着……」
「身請けって何かわかってます? 専属契約とかって意味じゃないですよ、愛人契約です! 愛人として飼い殺しにしたいってことですか!?」

 自分で言った言葉に自分で傷付く。
 そもそも彼は『ずっと』と言っただけで『身請け』だなんて一言も言っていない。

「公爵家はお金持ちですもんね、別宅でも建てて住まわせて気が向いた時だけ訪れて足を開かせるんですか? そして私は今日こそ来てくれるのだろうかとひとり訪れを待つだけの毎日を過ごせってことですか! そんなの、絶対ごめんです! 貴方に身請けとかされたくない!」

 酷い暴論だ。
 もう誰かに強制的にこの口を閉じて貰いたいと思うほど滑稽で愚かなのはまさに自分自身。

「わかりますか? 待っても待っても来ない人を待ち続けることがどれだけ辛いか!」
「わかる」

 その時はじめてルミール様から鋭く低い声が発せられる。
 そしてその声を聞いて私はハタとあることに気付いた。

“そうだ、ルミール様はご両親を事故で……”

 もしかしたら彼もなかなか帰ってこない両親を待ち続けていたのかもしれない。
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