悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 そして待っていた結果、帰って来たのは冷たくなった両親だけだった。
 
 自分の失言に気付き、私から血の気が引く。

 こんなことが言いたかったんじゃない。
 彼を傷付けるつもりなんてなかったのだ。

“馬鹿なことを言ってしまった”

 はぁ、とルミール様がため息を吐き、ビクリと私の肩が跳ねてしまう。
 一瞬で変わった空気に、女将もただ口を閉じていた。

「つまりサシャは、俺がそういったことをする男だと思っているということだな」
「ち、ちがっ」

 違う、そうじゃない。本当にそんなことが言いたかったわけじゃないのだ。

“馬鹿、馬鹿馬鹿馬鹿! 私は本当に馬鹿!”

 ガタンと扉を横に置き、くるりと背を向けるルミール様に思わず息を呑む。
 こんなはずじゃなかった、傷付けたい訳じゃなかったのに。

「……馬鹿、私の馬鹿……っ」

 私は、ただ。ただ――


「好きなんですッ!」

 気付けば叫ぶように想いを口走り、あんなに入室を拒んだあの部屋から自ら飛び出す。
 その勢いのまま彼の背中に抱き着いた。
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