悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
「そこでやっと気付いたんだ。俺にはサシャしかいないと」
「それ、私以外に跡継ぎを産めないとかいう話ですか?」

 話の流れからそう推察した私が、若干呆れつつそう言うと、小さく彼が首を左右に振る。

「俺にとって、特別な女性がサシャしかいないことに気付いたんだ」
“特別?”

 結局元を辿ると同じなのだが、彼の口から『特別』と言われると私の胸が高鳴ってしまう。
 案外私も彼のようにチョロイ女だったらしい。
 
「護衛まで用意して、振られるなんて微塵も思ってなかったんですね」

 これはただの出た私の言葉だったのだが、この言葉を聞いたルミール様がニヤリと口角をあげる。
 
「何しろ俺は悪徳だからな。手段は選ばないつもりだった」
「! もうっ、もしかして案外そのあだ名、気に入ってるんですか?」
「今となっては悪くないな」

 まるで悪戯が成功したように楽しそうにそう告げられ、私からも笑顔が溢れる。
 あんなに何度も『悪徳になんて見えない』と思っていたくせに、どうやら彼は本当に悪徳公爵だったらしい。

 そして私は、そんな彼の元に喜んで嫁ぐのだ。

“嫁いだ私は、きっと誰よりも幸せになれるわ”
 私はそう確信を持ったのだった。
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