悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 本番で成功させるための練習としているならば、衣装もそれに合うものをチョイスすべきだからである。

「つまり、私と最後まで出来るようになる、これがこのお仕事の期限ということですね」
「あぁ、手間取らせるがよろしく頼む」
「ひえっ、頭を下げないでください公爵様!」

 がばりと頭を下げた公爵様にギョッとする。
 私より九つも年上の、それも公爵という身分まである彼がただの娼婦に頭を下げることに焦ったのだ。

 だが私のそんな焦りを知ってか知らずか、何故かきょとんとした顔をした彼はすぐに照れ笑いのようなへにゃりとした表情をする。

「君は俺の師でもあるんだ、頭を下げるくらい当然だろう」
「そ、んな……」

“私には実績も何もまだないのに”

 まだ会ったばかりで彼の全てを知った訳ではない。
 きっと今も内に隠す苛烈な部分もあるのだろう。
 それでも。

“家の為にと私なんかに惜しげもなく頭を下げるなんて”

 力に、なりたい。
 素直に受け止められる彼を。
 ひとりで必死に頑張る彼を。

 そんな彼を支えたい。
 困っているなら助けてあげたい。
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