悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 どうしてだろう。彼が噂とは違い温かな雰囲気を持っているから?
 だが何故か私はそう、強く思ったのだった。


「ではまずは、今までの奥様が何故泣いてばかりだったのか調べましょう。私をひとまず本物の妻だと思ってベッドに誘っていただけますか?」
「本物の妻として?」
「そうです、本番で失敗しないように!」
「もう五回失敗しているんだが……、わかった。次こそ成功させてみせよう」

“とりあえず相手が泣くばかりという原因を突き止めなきゃ!”

 お互いごくりと唾を呑み、立ち上がった公爵様が私へと手を差し伸べる。
 バクバクと激しい鼓動を繰り返す心臓に気取られないよう願いながら、私が彼の手に自身の手を重ねるとすぐにベッドへと手を引かれた。

 そして促されるままベッドへと座ると、そんな私を組み敷くように彼もベッドへとあがる。
 
 ――悪くない。
 娼館に来る客の中にはもっと乱暴に腕を掴み、まるでベッドへと放り投げるようにして組み敷くような人だっている。

 そんな男たちに比べれば、公爵様はちゃんと相手を気遣い痛くないよう注意を払ってくれて――……

「では、早速」
「え」
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