悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 その素直な返事とともにゆっくりと体が抱きしめられる。
 薄い夜着だからこそ、服越しでもわかるその体温と鼓動が心地いい。

「これにはどんな効果があるんだ?」
「公爵様の男性的な体はとても魅力的ですし、抱きしめられることで安心感と委ねたいという気持ちが芽生えます」
「なるほど」
 
“多分”

 なんて心の中でだけ付け足す。
 それっぽく説明してみたが、正直娼館ではそんなところからはじめる客なんていなかった。

“でも、私は今未来の花嫁のためにここにいるんだからこれで正解のはずよ”

 娼婦に対してそこまで丁寧に接する必要はないが、相手が花嫁ならば話は別だ。
 それに私は今、確かにこの温もりに包まれて安心感と心地よさを感じているからあながち間違いでもないだろう。

「次はそうですね、まず……」

 順序的には口付けが妥当だ。
 だが、その単語を伝えるのに少し迷う。

“いきなり挿入してこようとしたくらいだもの、きっと口付けもはじめてよね?”

 まさかそれすら知らないとは思わないが、私はどこまでこの実践をしていいのだろうか。
 もちろん挿入はするだろう。
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