悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 まぁ私も詳しく知っている訳ではないのだが、それでも今目の前にいる人を悪徳だとは決して思えない。
 
「次はそうならないよう、私がいるんです」
  
 落ち込む彼の手に再び自身の手を重ねると、僅かにビクリと反応する。
 だが先ほどみたいにすぐに手を引き抜かれることはなかった。

「ひとつずつ知ればいいんです。だから、大丈夫ですよ」

 しっかりと彼の瞳を見ながらそう告げると、僅かに揺らいだ彼の黒曜石のような瞳が私の視線と絡まった。
 なんだかその状況が急に恥ずかしく感じた私は、自分の中で芽生えかけた感情を誤魔化すように再び彼の手を胸へとあてがう。

「最初は優しく、……ん、はい。そうです、痛くしないで? ゆっくりそのまま揉んでください」

 最初は彼の手を使って自慰しているようだったのが、次第に私の意思ではなく彼の意思で動き出す。

 次にどう揉まれるのかわからないというのは、それだけで私を上手く言い表せない不思議な気持ちにさせた。

“これが気持ちいいってことなのかしら”

 何度も見てきた光景。だが私だって実際に触れられるのは初めてだ。
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