悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 対して彼は公爵という身分を持ち、そして何より『次の花嫁を迎えるために』私を買っているのだから。

 だがいくら線引きをしっかりしたいからといって、ここで頑なに断るのも不自然だろう。
 仕方なく私は彼のその申し出に了承したのだった。

 ◇◇◇

「……面倒なことになったかも」

 はぁ、と思わずため息を吐いた私に気付いたのか、最年少侍女のミリーがぴょこんと私の顔を覗き込んだ。

「何かあったんですか?」
「あ、いえ、大したことではないのですが」

“流石に名前を呼びたくないなんて言えないわよね”

 私のことを救世主、だなんて呼んだのだから、「娼婦ごときが勘違いしているんじゃないの?」なんて言われないとは思うのだが、それでもなんだか正直に告げるのを躊躇った私は曖昧に話を濁す。

「大したことないなら、話した方が楽になっちゃうと思いますよぉ?」
「確かにそれはそう、なんですけど」

 彼女の言うことはもっともだ。
 それでも上手く話せずもごもごと口ごもり、なんだか申し訳ない気持ちになった。

「あ、じゃあ何か気分転換しましょっか!」
「へ?」
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