悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 彼はこの家を支える当主であり、そしてこの国を支える公爵なのだから。

「でも時間が空いてしまったのよねぇ」

 寝るにはまだ早く、だがこの時間から何かやることがあるだろうかと首を傾げた私は、パチンと両手を叩いた。

「紙と何か書くものを借りられますか?」
「すぐに持ってこさせましょう」
「あ、ありがとうございます」

 私の質問にすぐに頷いてくれたアドルフさんに、自分で言い出したくせに唖然とする。

「えーっと、いいんですか?」
「もちろんでございます」

“てっきり疑問に思われるかと思ったのに”

 貴族や、そういった高貴な方に仕える人は当たり前に読み書きはできるが、平民だと実は読めても書けないという人は多い。
 何故なら筆記具というものは高級だからだ。
 可愛いガラス瓶に入ったインクに、そのインクにつけて使う羽ペンなんかはデザインからして貴族の為に作られたようなものでお値段も張る。
 ペンの内側にインクがもともと入っている万年筆というペンもあるらしいが、見たことすらない高級品だった。
 
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