悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 そう思い至った私は足元から寒気がしぶるりと体を震わせた。


 いくら公爵家といえど、五人もの令嬢を処女だけ奪い捨てたのではあまりにも外聞が悪い。
 というか既に『悪徳公爵』なんてあだ名がついているほど。

 しかも初夜を終えた令嬢は、翌日には離縁され実家へと送り返された挙句何があったかは泣いて何も話さないと有名だった。

 公爵家である以上結婚し跡継ぎを作ることは必須である。
 だが五人もの前例があるとなれば、嫁ぎたいという純潔の令嬢はなかなかいないだろう。

「つまり私は生贄ってことね」

 既にいるのか今からまた探すのかはわからないが、次の正妻が捨てられないよう彼に捧げるための処女として選ばれたのだ。
 娼婦なら、一夜で捨てても何も問題はない。

 きっと私以外にも別の娼館からデビュー前の処女をかき集め悪徳公爵へと捧げられるはず。
 つまりこれはある意味私のデビュー戦ということ……!

 相手があの悪徳公爵だというのは想定外だが、どうせ一夜だけなのだ。
 ガクガクと震えそうになる足を叱咤し、使いで来た男性をしっかりと見る。

 そんな私に告げられたのは。
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