悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~

6.指南書って、もしかして私の願望書?

「こんなもんでどうかしら!」

“受け取って貰えるといいんだけど”

「おはようございま……えっ、まさか眠られてないのですか!?」
「え?」

 与えられた部屋に入って来たイレナが私の顔を見てギョッとする。

「あー、ちょっとその、捗っちゃって……」
「すぐに目を冷やしましょう!」
 
 苦笑した私に慌てた様子で駆け寄ってきた彼女は、私が手に持っていた万年筆を見て驚いた顔をした。

「えっと、私これでもノースィルの娼婦だから文字も習っているの」
「あ……! も、申し訳ございません、失礼なことを!」
「ううん、全然いいのよ、確かにこの仕事をしている娘のほどんどは字は書けないと思うから」

“この反応の方が普通だもの”

 昨晩のアドルフさんの反応の方が珍しいのだ。
 平民、中でも娼婦は文字の読み書きが出来る必要などない。

 とは言っても、高級娼館のノースィルでは女将の方針で全員読み書きが出来る。
 それは聡明さや知的さも彼女たちを輝かせるものとして売りにしているからだ。
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