悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 差し伸べられた彼の手に自身の手を重ねる。
 彼の手の熱を何も感じないのは、もしかしたら私の体の方が熱くなっているからかもしれない。

「ではまず……」

 ベッドの中央で向かい合わせに座った私たち。
 じっと見つめられるとなんだか居心地が悪くそわそわとしてしまう。

“まず、何からなのかしら”

 私が書いたその愛撫の内容は、既に実践した胸への愛撫を中心に更に応用させたものや、耳や首筋から足の指先へのものもある。
 そしてそれはつまり、練習台として今から私がされるかもしれないことばかりで、まるで自分にして欲しいことを書き出したようで気恥ずかしい。

 なんだか断罪を待っているような気持ちになってきた私は、段々と早くなる鼓動を必死に落ち着けようとしていた。
 そんな私に告げられたのは。

「まず、名前だな」
「……、へ?」

 言われた内容に拍子抜けしてしまう。

「名前、ですか?」
「あぁ。君は先日、閨では俺の名を呼ぶと約束しただろう」
「あ!」

 確かに約束した。
 本当に私なんかが公爵様の名前を呼んでもいいのだろうか、と若干不安が過るが、私をじっと見つめる彼に全く引く様子はない。
< 46 / 180 >

この作品をシェア

pagetop