悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 だがこれでもノースィルでは私が料理の下ごしらえもしていたのだ。
 流石にこの量は初めてだが、これくらいは大丈夫だと笑って頷き早速作業を開始する。

 私の手つきが思ったよりも手慣れていたからか、一瞬驚いた顔をしたイレナがすぐに私の隣に立った。

「私もやります」
「え? でも他の仕事があるんじゃ」
「それはサシャ様も一緒ですよ。それに私の仕事はサシャ様が快適にお過ごしいただくことなので問題ありません」

“い、いい子!”

 嫌な顔をせずそう言い切る彼女にうっかりきゅんとしつつ、お言葉に甘えて私たちは野菜の下処理を始めたのだった。


 下処理を終え、自室に帰ってきた私たち。
 
「思ったよりも大変だったわね……」
「お休みになられますか?」
「ううん、大丈夫。イレナさんこそ大丈夫?」

 野菜の下ごしらえというのは結構な重労働だ。
 いくら慣れているとは言っても、結構な量を一気に処理したので体が軋む。

 だがそれだけにこの適度な疲労が夜の安眠を支えてくれ――……って、寝ちゃダメだった!
 ハッとした私はチラリと自室のベッドへと視線を向ける。
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