悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
「隠れたりなんかしてどうしたんだ? ほら、サシャ、怖いことなんてないぞ」
「で、ですがその」

 不思議そうな顔をする公爵様に戸惑いつつ辺りを見渡すと、同じく不思議そうな顔でこちらを見る騎士たちに気付きビクッと肩を跳ねさせる。

“注目されてる!”

 そりゃ突然訓練場に来た人物が誰なのか気になるだろう。
 しかもその相手に公爵様自らが手を差し出しているなら尚更だ。
 ――一体どんなレディが顔を出すのか。
 もしかしたら次期公爵夫人なのではないか。
 
 だが、そんな彼に促され姿を現した人物がただの娼婦だったなら、彼らはどんな反応をするのだろうか。
 私にガッカリするだけならまだしも、その落胆が公爵様にまで向けられてしまったら――

「ほら。早く出てきたらいい」
「そうですよ、サシャ様。折角来たんですから」
「ってちょっと! 私まだ悩んでるのに!?」

 そんな私なんてお構いなしに、サッと身を翻し私と位置を入れ換えたイレナが私の背を押し、公爵様が宙を彷徨う私の手を掴む。
 まるでエスコートするように左手で私の手を握り、右手は私の腰へと回された。
 
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