悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~

12.そのプランは存じ上げません

「あの、もっと、もっと地味に出来ないかしら」
「えぇ~、むしろもっと着飾りません~?」
「いえ地味に! お願いしたいの!」

 おっとり喋るミリーの言葉に慌てて首を横に振るものの、全然手を止めてくれずに項垂れる。
 
 そんな私が今着ているのは、まるでどこかの令嬢が着るようなレースがふんだんに使われたドレスだった。
 一応昼間のお出かけだからか、動きやすいよう工夫もされているし見た目よりも軽い。
 フリルなどの装飾も少ないのだが、それでも私からすればこれはゴテゴテのドレスだった。

“まさかこんなことになるだなんて”

 ――そう、私は今から公爵様とデートの『練習』に行くのだ

「せめて使用人風にならない?」
「なりませんよぉ」
「そうよね……」

 あはは、と笑い飛ばされ小さくため息を吐く。
 確かに次の結婚相手と円満に過ごすための練習なのだ。使用人と買い物に行く練習ではない。

“円満な夜を過ごすなら夫婦の関係向上は必須だけど”

 だがまさか本当に公爵様とふたりで出かけることになるだなんて。
 ぶっちゃけまだ娼婦としてデビューしていなかった私の顔を知る者は少ないだろう。
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