悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 だがこの確認をするのはどうしても恥ずかしくて、私はもごもごと口を動かしながら足元へと視線を移したのだった。

 
 そんな私たちがまず向かったのは宝飾品店。
 あんなに人目を気にしていた私だったが、実際に出かけてみると移動は馬車だし、お店は貸し切り。
 これならば少しは落ち着いて買い物出来るだろう。公爵家の財力様々である。


 ――とは、言っても。
 
「これとかはどうだ? サシャの瞳と同じ色の石がついているぞ」
「そちらは最高級品質のペリドットをふんだんにあしらったネックレスでございます」
「……わぁ、値札なぁい……」

 にこにこと私に勧める店主と公爵様に頭が痛くなる。
 人目がないことは確かに落ち着くのだが、高級店というこの場所は何一つ落ち着かない。

「申し訳ありません、ちょっと私には合わないような……」
“主に値段が!”
「ふむ、わかった。ではここにある一番高いものはどれだ?」
「そうじゃありませんけどぉッ!?」

 わかったと言いながら何もわかっていない公爵様の腕にしがみつくようにして彼を止めると、きょとんとした公爵様の頬がじわりと赤く染まった。

“?”
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