悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~
 年によるものなのかと思ったが、こうやって明るい場所で改めてみると白髪交じりではあるのだが美しい銀髪で、モノクルの奥から深い海色の瞳と目が合った。

 平凡な薄茶の髪と淡い緑の瞳の私とは違いどこか高貴そうなその見た目から、もしかしたら彼自身も爵位を持っているのかもしれない。
 やっぱり様付けで呼ぶ方がいいかも、なんて一瞬頭に過るが、本人がそれでいいと言っているので従うことにした。

「何かありましたらいつでもこのベルをお鳴らしください、すぐに侍女たちが参りますので」

 そう言って可愛らしいベルを出すと、まるで見本を見せるように軽く振る。
 チリンと音がしたと同時に三人の女性が部屋の中へと入ってきた。

「シグネ、イレナ、ミリーでございます」

 アドルフさんが名前を呼ぶと、それぞれが順に頭を下げてくれる。

“最初に呼ばれたシグネさんは、アドルフさんと同じ銀髪だわ”

 こういう高位貴族には代々仕える一家がいると聞いたことがあるので、もしかしたら彼女はアドルフさんの娘なのかもしれない。

「わぁ、かっわいい~!」
「なんてことを言うの、ミリー!」
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