えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「どうやら乗り換える馬車が遅れていてまだ来てないみたいです。そして商品たる私たちが逃げ出したのならどうします?」
「見つけて捕まえるしかない、わね」
「えぇ。そして狩りの基本は逃げる場所を減らして逃走ルートを固定することです」

 そうすれば容易く獲物を捕まえることが出来るだろう。

「! つまり私たちが馬車に隠れないよう、先にルートを潰したということですの?」
「間違いありません。私たちはもう馬車に隠れているというのに!」
「まぁ、敵は何てお間抜けさんなのかしら」

 こんな時だというのに思わず顔を見合せ小さく吹き出してしまう。
 こちらから出られないというのは難点だが、少なくともここに私たちを拐った相手は踏み込めないのだから。

“安全な場所は確保したわ”

 自分たちのいる場所の目印に、大量のクッションの中身も落としてきた。
 馬車から転がり落ちた時に打った部分は痛いけれど、私もララも生きている。

“絶対死ぬわけにはいかないわ”

 もちろん売られる訳にもいかない。
 ジルの元に帰らなくてはいけないのだから。

“ううん、私がジルの元に帰りたいの”
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