えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

14.物理的にも神々しい

 それからどれだけの時間がたったのだろうか。
 馬車に掛けられているカーテン越しに差し込む光がオレンジがかり、そしてあっという間に辺りが暗くなる。

“ここにいる限り安全だけど”

 密室に隠れられているという安心感に少し肩から力が抜ける。
 
 おそらく太陽が沈み夜になったことで私たちの捜索は諦めたのだろう。朝には再開されるのだろうが、今近くに誘拐犯たちの気配がないということは単純にありがたい。
 
 だがいいことばかりではなかった。
 太陽が沈んだことによって気温が一気に下がったのである。

“ララ、震えてるわ”

 彼女には火の加護があるが、だが熱に強い火の加護は寒い状況では一切意味はない。

「大丈夫です」

 ララの体をぎゅっと抱き締めると、彼女も不安なのだろう。そっと私の肩口に確かな重みを感じ、私は抱き締める腕に力を込めた。

“それにしても、犯人たちはどこに行ったのかしら?”

 さっきの納屋で太陽が昇るのを待っているのだろうか。
 私たちはここにいるのが本当に正解なのだろうか。

 そんなことを考えていた時、ふとあることに気付く。

「……ララの体、熱くない?」
< 102 / 262 >

この作品をシェア

pagetop