えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
“もし私たちが馬車にいることがバレたら”

 その時はこの空間から出ることも叶わずまさに袋のネズミというやつなのでは。

「る、ルチア、外が!」
「え!?」

 この状況をどう打開すべきかと頭を悩ませていると、突然馬車の窓を指差すララ。
 そして彼女の指の先を見て私は目を見開いた。

「あ、明るい……!?」

 とっくに太陽が沈んだというのに、まるで昼のように明るかったのだ。

「ま、まさか証拠隠滅のために馬車に火を放ったんじゃ……!」
「そんなっ」

 驚いた私たちは再び扉から離れ、身を寄せ合う。
 だがこの明るさだ。
 火がこの馬車中を包むのも時間の問題だろう。

“どうしよう、どうしたら”

 誘拐ならいつか助けにきてくれるのだと信じて待てる。
 けれど、今この馬車に火がつけられたのだ。

“死……!”

 その明確なイメージが背後に迫り全身が一瞬で凍り付いたように感じる。

 嫌だ、死にたくない。このまま人生を終えるなんて考えられない。
 だって私はまだ――

「まだ、ジルに好きだって伝えられてないのに……!」

 こんなところで今死ぬ訳にはいかない。
< 105 / 262 >

この作品をシェア

pagetop