えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 いつか終わるのだとしても、まだもう少しだけ、彼の婚約者という夢に浸っていたかった。

“せめてもう一目彼に会いたい”

 あの眉尻も目尻も少し下がったような笑顔が見たい。
 たまにするムスッとした顔だって、他の人に向ける王太子の顔だってまだまだ見つめていたいのだ。

「やだ……、ジル、助けて、ジル――ッ!」
「ルチア!!」

 ガタン、と大きな音がして扉が乱暴に開かれる。
 
 扉から現れたのは、正に今心の底から望んでいた光輝く相手。
 装飾品として飾られている数々の宝石が光に反射し、普段からキラキラなのに今はより一層輝きに満ちているジラルド殿下だった。

「神の、愛し子……」

 反射した光でよりキラキラと輝くその姿があまりにも神々しくて、目頭が熱くなり視界が滲む。
 と、いうか。

「ま、まぶしっ! まぶしっ!? 物理的にまぶしっ!!」
「儀式はまだか!? よかった、無事で良かった……!」

 私を見てくしゃりと顔を歪めたジルが私の手を強く引き、気付けば私はジルの腕の中にすっぽりと収まってしまう。

「ルチア、ルチア……!」
「え、ジル? ほんとに?」
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