えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「痛いところは? 怪我はしてない?」
「私は全然……、はっ、火! この馬車に火が……あら?」
「あぁ、太陽が沈んで暗かったからね。光ってたんだ、光の加護で」

 さらりと告げられた言葉の意味がわからずポカンとするが、言われてみれば確かに今も眩しくて目が痛い。

“神々しいとかじゃなく物理的に眩しいで合ってるの!?”

「光の加護ってそんなことも出来るんですね……」
「あぁ、便利だろう?」

 にこりと笑われれば確かにそんな気がしてしまう。

“いつも通りの笑顔”

 つい先日も見たのにずっと恋しかったこの笑顔に、胸の奥が痛いほど締め付けられる。

「……ほんとは怖かった……」

 助けてくれるって思ってた。ジルを疑ったことなんて一度もない。
 でも。

「ジルと離れて心細かった……!」
「うん、ごめん。遅くなってごめんね、ルチア」

 ジルの腕に縋るように抱きつくと、苦しいくらい強く抱き締め返される。
 今はその苦しさが嬉しくて仕方がなかった。
 
「まぁ、光の加護で光れるってことは闇の加護で闇に紛れられるってことだけどな」
「お兄様!?」
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