えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

15.どこまでも確かめて

「チッ」
「い、今のは――」
「いいから早く馬車から出てください」

 じとりとした視線を向けられもごもごと口ごもる。
 
「あ、でも中に……」
「早く」
「は、はいっ」

 その抗議の表情と声色に慌ててジルと馬車から降りると、そんな私たちと入れ違いに馬車へと入った兄は、まだ奥にいたララの前へ跪いた。

「ご無事でしょうか? フラージラ嬢」
「あ、はい……」
「触れる許可をいただけますか」

 馬車を覗くがララの方を向いているため兄の表情はわからない。
 
 だがララが頷いたのを確認し、ジルが私を抱き上げたのと同じように兄も彼女をそっと抱き上げてすぐに馬車から出てきた。

「一人でまたあの馬車に乗るのは不安でしょう。家までお送り致します」
「あ……」
「? 大丈夫です、フラージラ嬢のことは命に代えてもお守り致します。騎士ですから」
「もしかして、王子様……?」
「いえ騎士です」
「素敵……もしかして貴方が私の王子様なの……?」
「いいえ、ただの騎士です王子じゃないです違います」

“語感がいい!”

 バッサリと断言した兄をどこかぽやんとした表情でララが見つめる。
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