えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 どこか熱っぽいその視線に、私は思わず首を傾げたのだった。

 ◇◇◇

「お帰りなさい、お兄様!」

 救出された後、兄たちより少し遅れてその場に騎士たちが到着したのを確認し、私とララはそれぞれジルと兄の馬に乗せて貰い帰宅した。

 誘拐犯たちは、ジルが馬車を開けてくれたのと同時に納屋へ踏み込んだ兄が拘束していたらしい。

“結局私たちを拐った目的は何だったのかしら”

 どちらが目的だったのかもまだわかってはおらず、捕まった誘拐犯たちから詳しく事情が明かされることを祈るのみである。

 
「ララの様子はどうでしたか?」

 帰宅した兄を玄関先で捕まえると、ふわりと頭が撫でられる。

「外傷はない。熱も大したことはないようだから、また手紙でも書くといい」

 ふと最後に見た兄へと向けるララの熱っぽい視線を思い出すが、“そういえば熱が出てたんだったわね ”と納得した。
 
「お前のこと、心配してたぞ」
「そっか、ありがと」
「ルチアも疲れただろ」

 疲れているのはきっと兄も同じだろうに、そうやって気遣ってくれるところがやはり兄妹なのだと実感し頬が緩む。
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