えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
“ひとまず皆無事で本当に良かった”

 ララの無事も確認して安心した私が自室へ戻ろうとすると、少し戸惑ったように呼び止められる。
 振り向くと、どこか顔色が悪い兄と目が合った。

「あー、変なことを聞くんだが、フラージラ嬢って……」
「ま、まさかお兄様!? だ、ダメよ不毛だわ、だってララはジルの事が――」
「殿下とお前のハイブリッドみたいな感じなのか?」
「は?」

“何の話?”

 訳がわからずきょとんとしていると、すぐに顔を軽く左右に振った。

「……いや、いい。自意識過剰で、杞憂で気のせいだと俺は信じる」
「な、なんなのよ」

 そのままブツブツと歩く兄の背中を見送った私は、やはり首を傾げながら今度こそ自室へと戻ったのだった。

 

「変なお兄様」

 一体何が言いたかったのかしら、なんて考えながら部屋へと戻ると、どこからかふわりと嗅いだことのある甘い香りがし不思議に思う。

 だが部屋を見回すが変わったものがある訳ではなく――

「ルチア」
「きゃ……ん、ぐぐっ」

 誰もいないと思ったのに突然背後から声をかけられて反射的に叫び声をあげそうになるが、それを手で塞がれた。
< 111 / 262 >

この作品をシェア

pagetop