えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「じ、ジル?」
「こんな時間にごめんね、ルチアのことが心配で」
「それは全然構わないんだけど」

 いつの間に部屋に入ったのかわからず呆然とするが、だがあんなことがあった後だからだろう。

「え、な、なに?」
「ううん、幻じゃないなって」
「ンンッ」

 そこにいることを確かめるようにベタベタと彼に触れ、愛しい相手がちゃんと目の前にいるというこの状況にホッと息を吐く。


 少しだけいいかな、と申し訳なさそうな表情を向けられた私は、ずっと立ちっぱなしだったことに気付き慌ててソファへと案内した。

“はずだったんだけど”

 何故かふたりして私のベッドへと腰掛けている状況にハテナが飛ぶ。

“部屋にふたりきりは、この間もそうだったし肉壁とはいえ正式な婚約者だから問題ないってジルが言っていたけれど”

 この時間のベッドにふたりはいいのだろうか、なんて一瞬頭に過るが、なんだか今日は色々あったからか許されるならばもう少しだけ彼に寄りかかりたいと口にはしなかった。


「今専門の者が尋問をしている。きっとすぐに色々わかるから安心して欲しい」
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