えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「……うん。あ、そういえば本当ならあの場所で馬車を乗り換える予定だったみたい」
「なに? だが他の馬車はなかったようだけど」
「遅れていたお陰で助かったのね」

 犯人たちの会話を思い出しながらそう口にすると、少し考え込んだ表情になるジル。

 月明かりに照らされる彼のプラチナブロンドの髪がまるで朝露に濡れたように美しいと、こんな話をしているのについ見惚れてしまう。

「ということは、別の場所で儀式を行うつもりだったのか……?」
「ぎ、儀式!?」
「あぁ。実はルチアたちを追いかけていた時に大量の鳥の羽を発見したんだ」
「そんな……!」

 その恐ろしい話に体中の血の気が引く。

「まさか鳥の次は私たちを……、鳥の羽? 鳥の羽と言えば――」

“それってまさか”

 まさか、まさかまさか。

「私たち、服を脱がされそうだったってことですか!?」
「え」
「だって羽なんですよね? 鳥の体を覆っているものは羽だし、私たちの体を覆っているものって考えると」
「なるほど、ルチアは天才だな……!」
「それほどでも……っ、えへ、あ、でも実はそれララにも言われたんです」
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