えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 一日でふたりから天才と称された私が照れていると、何かに気付いたジルが私の肩に両腕を置いた。

「まさかとは思うけど、ルチア脱がされたりはしてないんだよね?」
「え? えぇ、ジルが助けに来てくれましたし」
「怪我とかも本当にしていないか心配だし、婚約者として確かめてもいいだろうか」
「確かめ、る?」

 その言葉にポカンとする私にジルが大きく頷く。
 その真剣な表情に、釣られて私も頷いた。

「口付けからはじめていい?」
「えっ!? 怪我とか色々確かめるため、なんですよねっ!?」
「うん。でも、したいから」
「したい……なら、仕方ないですね……」

 彼と口付けるのは初めてではないし、それに私もしたいから。
 激しく鳴る心臓を手で押さえながら両目をぎゅっと瞑ると、啄むように一瞬触れて、そしてすぐにしっかりと重なり合う。

 少ししっとりとした柔らかい唇が心地よく、相変わらず痛いくらいに心臓は跳ねているがその高鳴りすらも悪くはない。

“むしろ幸せ、かも”

 重ねるだけの口付けを繰り返していると、ジルの舌が私の唇にそっと触れる。
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