えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 誘われるように少しだけ口を開けると、すかさずその隙間から舌が入れられ私の舌と絡められた。

「ん、んっ」
「ルチア、舌出して? ほら、練習したでしょ」
「あ、こ……う?」

 言われるがまま舌を出すと彼の唇で食むように挟まれ、すぐに扱くように舌が動いた。

「ん、あ……っ」

 ちゅくちゅくと湿った音が口端から零れ、彼の舌と私の唇に細い透明の糸が伝う。

 キラキラ、キラキラとサファイアのようでありペリドットにも見える彼の輝く瞳がいつもよりもルビーを濃くした色に染まり、妖しく揺らめきながら見つめられるとそれだけで体が熱くなるようだった。

「ルチア」

 名前を呼ばれ、抱き締められる。
 そしてそのまま体重がかけられると、あっさりと私の視界に天井が広がった。

「……ジルは危なくなかったですか」

 来てくれるって信じていた。
 けれど本当は、彼は来るべきではなかったのだ。だって彼は王太子だから。

“危ない場所に本人が来る必要はないもの”

「私もジルが怪我とかしていないって、確かめてもいいですか?」
「あぁ。ルチアが安心するまで好きなだけ確かめて欲しい」
< 115 / 262 >

この作品をシェア

pagetop