えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

16.本当は私だって

「ん、ジル……」

 彼に組み敷かれ、何度も口付けが落とされる。
 激しい口付けで酸素が足りず苦しいが、強く舌を吸われ、歯列がなぞられると気持ちよくてそれすらもどうでもよく感じた。

“もっと”

 彼を深く感じたい。
 これが現実だと実感したい。

 心にそう刻んで欲しくて必死に舌を伸ばすと、先端だけがチロチロと絡まされる。
 さっきまで深く口付けていたからか、その僅かな刺激が歯痒くてさっきジルがしたみたいに歯を立てないよう気を付けながら彼の舌をぱくりと食んだ。

 熱い舌を唇で挟むと、思ったよりも弾力があって少し驚く。

“この舌が私の体を舐めて……”

 脱がされ、見られ、触れられ、舐められた。
 与えられたそれらの行為を思い出すと、ぞわりと体が粟立つ。

 途中で匙を投げられてしまった閨教育。
 あの夜彼に触れられた以上のことがまだあるのだとしたら――

「……もう触って欲しくなっちゃった?」
「え? あっ」

 くすりと小さく笑みを溢したジルにそう問われた私は、一拍遅れて自身の手で胸を揉むように触っていることに気付く。

「ちがっ!」
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