えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
“だって大好きな人の言葉だもの”
 
 それにあれだけハッキリと断言されると確かにその程度のことなのかもしれないと思わされた。

 だが、落ちこぼ令嬢の私に出来ることがあるのかという疑問が残る。

「では私にも、殿下の側にいる……役に立てる役目はありますか?」

“どんな雑用や役割でも、それで好きな人と交わした幼い頃の約束が果たせるなら……!”

 何でもいい。
 私が、私自身が側にいたいと切実に願っているのだから。

「この家に生まれたのに何も出来ない私に出来ることがあるならば、お教えください……!」
「……さん」
「え?」

 何でも持っている彼が必要なものがわからなくて思わずそう聞くと、一瞬彼の宝石のような瞳がキラリと輝く。

「僕のお嫁さんはどうだろう?」
「お嫁、さん?」
「でっ、殿下!」
「せめて婚約! 婚約者からで!」

 遠くで焦ったような父と兄の声が聞こえたような気がしたが、殿下のその言葉が甘く響き彼から目が離せなかった。

“私が、殿下と?”

 またいつもの甘い冗談なのだとわかっているのに、射貫くように真っ直ぐ見つめられているせいで何故だか呼吸がし辛い。
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