えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 粘りを帯びた音が部屋に響き私の口からは言葉にならない甲高い声が何度も上がった。

“きっとこれが、あの小説の先なんだ”

 途中までしか読んでいないあのロマンス小説。
 母に続きは委ねるように言われたその意味を、その先を本能的にそう理解する。

「ジル、だめ、こんなの……もう、練習を越えて……っ」
「違うよ、これは練習じゃない。ルチアが好きだからだ」
「好き……?」
「あぁ。愛してる、ルチア」
「ひぁ、あっ、あぁっ」

“愛?”

 そんなの、私だって。

 誰よりも近くで見てきた誰よりも遠い貴方。
 もし私に資格があったのならば、本当は練習だけじゃなく本番だってジルがいい。

「ルチア、ルチア……!」
「んあっ、ジル、ジ……ルっ」

 甘く掠れた声色が耳をくすぐり、下腹部が強く擦りあげられるとその声に呼応するように太股で挟んでいた彼の先がぶるりと震える。

“熱い”

 初めて感じるその劣情に愛おしさと僅かな寂しさを思えながら、私は意識を手放したのだった。
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