えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

17.証におはようを告げて

「んん……」

 窓から入る日射しでいつの間にか朝になっていることに気が付く。

“ジルは……”

 意識を手放す前には確かにそこにいたはずの彼の形跡はなく、シーツも冷たくなっていた。

「帰っちゃったのね」

 当たり前だ。だってここは私の家で私の部屋。
 彼の居場所ではない。

“服……しっかり着てるわね”

 まるであんな触れ合いがあったとは思えないほどしっかりと服を着ており、一瞬自分に都合のいい夢だったのかとも思ったが、いくつも刻まれたその赤い証が現実だったと教えてくれた。

「……嬉しい、かも」

 着替えで侍女に見られるのは少し気恥ずかしいが、それでもこうやって刻まれているのいうのはどこかくすぐったくてこそばゆい。

「もうっ、もうっ! さっさと朝食食べに行かなくちゃ!」

 この時間ならばまだ家族も朝食を食べているだろうと、痕が隠れるように首まで隠れるデイドレスに着替える。
 少し小走りに浮かれた気持ちのまま食卓のある部屋の扉を開くと、そこには。

「あ、おはようルチア」
「じ、ジル!?」

 てっきりもう帰ったのだと思っていた相手がそこにいてぎょっとした。
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