えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「ごめんね、君が起きる前に食べられそうなものを選んで部屋へ戻るつもりだったんだけど」
「ちょっと殿下には聞きたいことがありまして」
「あぁ。何故妹の部屋から朝出てきたのかとか詳しく聞く必要があって」
「……ね? ちょっと足止めされちゃって」

“足止め”

 これは一国の、しかも神の愛し子と呼ばれる唯一無二の王太子を尋問しているのではないだろうか。
 その可能性に私の額に冷や汗が滲む。

「いや、あの……っ、これは……!」
「というかそもそもいつの間にルチアの部屋に……」
「それ! 私も気になってました!!」

 少しでも話を逸らそうと、怪訝そうにそう呟く兄の言葉に全力で乗ってみると、私とは対照に何も焦っていない余裕の表情でジルが私に笑顔を向けた。
 
「あぁ、光の加護で発光出来るように、闇の加護で夜に紛れられるんだよ」
「それ夜にこっそり妹の部屋に侵入したことの告白なんですよねぇ!」

“そんなことも出来るの!?”

 思い切り頭を抱えた兄は少し気になったものの、私はそれよりも加護の使い勝手の良さに目を丸くさせる。

「流石ね! やっぱり加護ってすごいんだわ」
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