えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「? 中に何か、入れるんですか?」
「殿下の棒がお前の穴に突き刺さったのかを聞いてる!」
「お、おいエミディオ、流石に言い方が……」
「大事なことです、父上は黙っていてくださいッ」

 兄から向けられるこの殺伐とした空気に若干引きつつ、だが言われている意味が分からずジルの方へ視線を向ける。
 その私の視線を受けたジルが、小さくため息を吐いて両手を上げた。

「……ルチアが『一応』の婚約者と思い込んでいるうちは、流石にね」
「あんなに外堀は埋めるのに……!」
「あらぁ、ルチア愛されてるわね。ぶすっといって既成事実を作る手もあるのに」

“どういうことなの?”

 どこか楽しそうな母、そんな母に戸惑う父、何かに安堵している兄と、若干拗ねたようなジルの顔を順番に見るが、みんなが何を言っているのかはわからず首を傾げる。
 そんな私に吹き出した母が、卓上のベルをチリンと鳴らすと、銀トレイを持ったメイドが室内に入ってきた。

「手紙が届いているわよ」
「手紙ですか?」

 母に言われ受け取った手紙に、つい昨日一緒に誘拐されたララの家であるコルティ公爵家の家紋が押されていることに気付く。
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