えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

18.もしかしての新しい可能性

「ジルを諦めるって……」

 ララに言われた内容が上手く理解できず愕然としてしまう。

“だってあんなに好きだったのに”

 誘拐されたあの時、彼女はジルへの恋心を語ってくれた。
 それは相手が王太子だからという権力的なものではなく、ジラルドというひとりの人間に対する好意だったはずだ。

 そしてその想いは、不安な時に心の支えにするほどのものだったのに。

「どうして、そんな」
「簡単なことですわ。あの場にはふたりいたのにまっすぐルチアだけを見て飛び込んでこられたのを見たからです」

 ララの言う“あの場”とはきっと昨日の馬車のことだろう。
 そして確かに彼女の言う通り、ふたり、しかもあの馬車はララの家の馬車だったにも関わらずジルは私の名前だけを呼び私だけを抱きしめた。

“確かにもし私がララと同じことを目の前でされたら、ショックで好きでいることが辛くなるかもしれないわ”

 そう感じズキリと強く心臓が痛む。
 それに私は彼の肉壁なのだ。ララに「諦めないで」なんて言えはしない。

 黙りこくってしまう私だったが、そんな私にララが小さく笑みを溢す。
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