えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 緊張で喉が引きつりつつも、私はここぞとばかりに余裕の笑顔を作った。
 
「わ、わた、私ですけれどっ」
「る、ルチアですって!?」
「そうです、私が本物の婚約者なんです」
「ほ、本物の婚約者って……偽物もいらっしゃるの?」
「いません、いませんけど! 丸ごと全部本物です!」
「丸ごと全員本物!? 全員と本当に婚約中ってこと!? そんなことって……っ」

“ララの驚きようを見る限り確信は無かったということね?”

 戸惑っているララには悪いが、これは任務の為なのだ。
 多少無茶苦茶でも押し通すしかない。

「そうです、本物の本物です!」
「そんな、だって兄妹って……」
「? 確かに兄妹のように育ちはしましたが」
「その前提から違いますの!?」
「いえ、俺とルチアは兄妹です、本物の」
「お兄様!?」
「ひゃぁぁあ!?」

 いつから聞いていたのか、かなり呆れた表情で私たちのところに入ってきた兄を慌てて睨む。

「ここはレディのお茶会です!」
「いや、混乱の茶会だろ……。フラージラ嬢、突然割り込んでしまい申し訳ありません」
「い、いえっ……、その、それは構わないのですが」
「?」
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