えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 チラチラとララからの視線を感じ首を傾げていると、兄がゆっくり口を開いた。

「先程も言った通り俺とルチアは兄妹です。それ以上もそれ以下もありません。ルチア、お前の婚約者は殿下だけだな?」
「なっ、何を当たり前なことを……!」
「ちなみに俺に婚約者はいません、これで疑問は解決しましたか?」
「あ、はい。何かがすれ違ってしまっていたことがわかりましたわ」

“どういうこと?”

 ぶっちゃけ訳がわからない。
 何故兄が突然婚約者がいないと宣言した理由もわからない。

“やはりお兄様、ララのことを……!?”

 そうだ。
 よく考えれば昨日だって妹を無視してララを優先し助けていた。

「確かにララは美しいですが、お兄様には高嶺の花で――んぐぐっ」

 この無謀な兄の恋をせめて早めに諦めさせるべきだと慌てて口を開くが、顎を掴まれ強制的に閉じさせられる。

 まるで子供の兄弟喧嘩のようなことをしているが、表情だけは穏やかな笑顔を取り繕った兄が、ララへとにこやかに微笑んだ。

「申し訳ありませんが、本日はこの辺で失礼してもよろしいでしょうか」
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