えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 さらりとそう告げ、私の顎を掴んだままぐいぐいと押して温室の出口へと兄が向かう。
 そんな私たちをララが呆気に取られながらも見送ってくれた。

 ◇◇◇

「……なんだったのよ」

 掴まれた顎を擦りながら馬車で向かいに座った兄を睨んでいると、大きなため息を吐かれる。

「それはどれに対しての?」
「ララの方!」
「そっちは却下」

“却下って何!?”

 確認しておいて教える気のない様子にムッとした。

「やっぱりララのこと好きなの? 婚約者がいないアピールもしていたし」
「どういう思考をすればそうなるのかがわからん」

“違うのかしら”

 辟易とした表情の兄に、流石に違ったのかとそう考え直すが、そうなると今度は先程の会話の辻褄が合わない。

 わざわざ兄に婚約者がいないか確認したり、わざわざ自分に婚約者がいないとアピールしたり。

“お兄様がララを好きじゃないなら、もしかして……”

 全くその可能性に辿り着かなかったが、だが失恋を癒すのもまた恋愛だと母が言っていた気がする。

「つまり、ララがお兄様のことを!?」
「それも違う」
「……違うの?」
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