えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

19.視覚的にも意識して

「ジル、大丈夫ですか!?」
「ルチアっ」

 兄から恐ろしい話を聞き不安になりながらコンタリーニ家へと戻ると、当たり前のようにジルが出迎えてくれた。

 その姿に思わず抱き付くとジルもぎゅっと抱き締め返してくれて、その温もりに僅かに安堵する。

“良かった、無事みたい”

「私ジルが襲われたと聞いて」
「あぁ、そうなんだ。僕は怖くて怖くて……とてもひとりで眠れそうにないから、今日からずっと一緒に寝ていい?」
「えぇ、もちろんですよ殿下。全力で夜通し護衛致します。どうぞ俺の部屋で」
「ちょ、お兄様!」
「チッ」

 不安がるジルを無理やり剥がした兄へ慌てて抗議をしようとした時、階段から父と母が降りてきた。
 その二人の顔から表情が消えているのを見て嫌な予感を覚える。

“ジルは大丈夫、なのよね?”

 本人は元気そうに振る舞っているが、空元気というやつなのかも、と不安になった私の表情に気付いたのだろう。

 ジルが私を安心させるためににこりと笑顔を向けた。

「怪我とかはないよ。ちょっと加護が無くなっただけ」
「そうなんですね、良かっ……えぇっ!?」
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