えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 さらりと告げられたその言葉に愕然とする。
 隣で聞いていた兄の顔も驚愕に染まった。

「加護が、無くなった……!?」
「そうなんだ、呪物の類いかな? 本来呪いは光の加護で跳ね返せるんだけど、不意を突かれちゃって」
「そんな」

 誰が何の目的で?
 可能性なら無限にある。
 
 ジルのことが単純に気に入らない場合もあれば、誰かからの逆恨みもあり得る。
 だって彼は王族、ただそれだけで自国からも他国からも狙われる可能性があるのだ。
 
 加護がないということは今彼に毒が効く。
 暗殺を狙うことも出来るだろう。

“それに今なら他の薬だって効くわ”

 彼に睡眠薬を盛って寝込みを襲うことも、媚薬を盛って既成事実を作ることも出来る。
 私という肉壁がいたとしても、既成事実を盾に結婚を迫られれば拒否は出来ないのだ。

「そこまで深く悩む必要はないよ」

 血の気が引いていた私に優しくジルが声をかける。
 襲われたのはジルなのに、まるで私を慰めるような声色が私の冷えた心にじわりと染みた。
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